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大気圧合成

◇ ダイヤモンドライクカーボン薄膜を応用した新規医療機器の開発

 心疾患・脳血管疾患など血管系疾患に起因する疾患が死因の多くを占める中、血管内治療に用いる医療機器のニーズが増加している。血管内治療では、機器表面への血液の凝集体(血栓)形成が機器の機能不全、術後合併症を誘引するものとして問題となっており、抗血栓性の向上が望まれている。当研究室では、優れた機械的特性、生体適合性をもつDLCに着目し、フッ素を添加したDLC(F-DLC)が優れた抗血栓性をもつことを明らかにしてきた。F-DLCはプラズマ技術を用いて気体原料から被成膜材にコーティングされ、既存の材料に抗血栓性を付与することが可能である。私たちはF-DLC薄膜を血管内治療機器の一つであるステントへ応用するため、F-DLCと金属の密着性改善に取り組み、中間層導入によりF-DLCをステンレス製ステント上へ剥離なくコーティングする技術を確立した。また、F-DLC被覆ステントを動物の血管内に埋め込んだ試験において、F-DLC被覆ステントが既存のステントと比べ術後合併症である血管狭窄を抑制することを明らかにした。

ステント(SUS316L)への成膜技術

再狭窄率に関する動物実験結果

DLC/リン脂質ポリマーの複合材料

 当研究室では、DLCを用いた複合材料についても研究を行なっている。優れた抗血栓性をもつ一方で良性な細胞の付着・増殖も抑制してしまうリン脂質ポリマー(MPC)上にブロック状のDLCをコーティングし、ポリマーの抗血栓性を保ちながらDLC上で細胞増殖が可能な材料を開発した。他にも、蓮の葉に見られる微細凹凸形状とワックス効果による超撥水効果をヒントに、プラズマ技術を用いて微細凹凸形状を作製した材料表面にF-DLCをコーティングし、超撥水面を作製している。

 現在、医療技術の進歩と共に工学と医学の融合が重要視され、様々な技術を医療に応用しようとする取り組みがなされているが、真に必要とされる技術を迅速に臨床現場へ提供するために、臨床のニーズを把握した上で基礎研究を進める体制が必要不可欠である。私たちは基礎研究を臨床現場へ最短距離で届けるため、東海大学医学部と連携を組み、ニーズを常に反映しながら技術開発を行なっている。

蓮の葉を模擬した表面

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